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将棋局面|丸山忠久vs郷田真隆2014-03-23NHK杯決勝|郷田、亡き師匠に捧げた優勝

2014年03月23日NHK杯決勝

丸山忠久九段vs郷田真隆九段  棋譜 

横歩取りで、先手が飛車を引かない青野流、後手は中原囲い。1図、いきなりぴょんと▲4五桂と桂馬を跳ねたのは驚きの開戦で、中原誠十六世名人同士が戦っているような図であった。だが、後手の次の一手にもっと驚いた。 

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△3七歩

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郷田、亡き師匠大友九段に捧げたNHK杯初優勝

 「九段」同士のNHK杯決勝は意外となかったようだ。

角取りなので、とりあえず8八角成として考えそうだが、△3七歩が驚愕の一手。 解説の森内竜王名人、井上九段も驚きの手だった。 3三桂不成と角を取るのもあったと思うが、▲3七同銀△8八角成▲同銀△5五角と進んだ。これに丸山九段困った。

以下▲7七角△7六飛▲8四飛△3七角成▲8一飛成△7五飛(3図)とすごい変化になったが、最後の△7五飛が大好手だった。 

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4五の桂馬取りがうまく受からない。丸山九段まいった。7六の飛車をちょこんとひとつ引いたのは、空中戦法の流祖内藤国雄九段を思わせるような飛車使いだった。 その後も終始後手優勢で進行して郷田九段勝利となった。

 

意外や郷田さんはNHK杯初優勝だった。 アナウンサーに優勝カップのことを聞かれ、「亡くなった師匠の名前もここに入っていますんで、師弟で優勝できて本当にうれしいです。」と語っていたのが印象に残った。 「大友昇七段」の名が歴代優勝者にあったのは、昔から妙に記憶に残っていた。 毎年、決勝戦で映し出される歴代優勝者表で、前後に大山名人やA級八段の名前がずらると並ぶなか「大友昇七段」の名前が目を引いた。「大友昇」の名をここで覚えた。あの時代、七段での優勝は大変な快挙だったろう。 将棋連盟HPを調べると、大友昇九段はA級一期の棋士で、NHK杯優勝は輝く棋歴だった。 また、大友九段門下と言えば昔、兄弟子森雞二九段がNHK杯決勝に進出したが、皮肉にも師匠に次ぐ「七段」での優勝を前田祐司七段に与えてしまった。森九段は準優勝2回で、優勝はできなかった。 いつも淡々とした感じの郷田さんが亡き師匠のことを口にした。 この一戦は心中期するものがあったのだろう。郷田さんほどの名棋士でもNHK杯優勝は大変だった。 将棋界は厳しい。亡き師匠に捧げたように感じた、心に残る優勝だった。