将棋局面|天野宗歩vs八代伊藤宗印1856-11-17御城将棋|その1 天野宗歩の有名な手
1856-11-17御城将棋
「天野宗歩七段」vs「八代伊藤宗印七段」
幕末の棋聖、天野宗歩の将棋から。5筋を突き合い、後手が△5二飛とまわる特殊戦型。
先手に、かの有名な次の一手が出た局面。
▲1八角
天野宗歩の有名な遠見の角
▲1八角と打ったのが、あまりにも有名な「遠見の角」である。
香車の上に角を打つこの手は、当時とすれば斬新で仰天の一手だったのではないか。 そしてこの手を有名にしたのは、御城将棋という大舞台で宗歩が宗印を相手に勝ったことが大きい。 負けていれば埋もれていたであろう。
本局は宗歩の快勝だった。
ただし、この手は名手とする見解もあるが別の見解もある。
天野宗歩将棋の著書での中原誠十六世名人の見解は、次のようなものだった。 「▲1八角は仕方なく打ったのではないか。正確に受ければ後手が悪くなかった」という旨だった。
なるほど、5四の歩を取らせないための苦心の一着にも見える。中原先生の冷静な見解で面白い。 難しいことはさておいても、この角は見ているだけでもとても面白い。 飛車の横、香車の頭という狭い所。左上方向にしか動けない。
遠見の角は現代将棋にもしばしば現れる。時に好手となり、時に局面打開の一手になる。 これを定跡化した第一歩が天野宗歩の本局なのだろう。
その2につづく。