将棋局面|羽生善治 vs 谷川浩司 1992-10-20 竜王戦1局|その2 決め手の絶妙手 詰めの名人谷川の名局
1992(平成4)10/20第05期竜王戦七番勝負第1局
”その1”からの続きで、超難解な終盤。
7六の飛車を▲7六角と取った局面。
度肝を抜く光景が見られた。
△6八銀
決め手の絶妙手 詰めの名人谷川の名局
△6八銀が絶妙手。これで即詰みとなる。
以下▲8九王△8八歩 ▲同 金 △7九飛▲9八王 △8九銀 ▲同 金 △同 飛成 ▲同 王 △8八銀まで、後手谷川の勝ち。
ふつう1図では6九飛と打つしか考えない。6九飛、8八玉、7九銀、同金、同飛成、同玉とバラす。これが詰みそうだが、7六の角がよく利いて妙に詰まないのだ。
△6八銀に6八同金なら5九飛と打って詰み、が谷川竜王の読み。ただしこの変化は実戦には現れなかったが、容易ではない。調べると、5九飛以下6九銀合い(歩は6三にあるので二歩で打てない)に、同桂成、同金のとき5七角!と打つのがわかりやすいようだ。同金なら、6八銀、同玉、5七歩成以下。6八桂合いなら、5九飛成、同玉、6八角成、同玉、5七銀以下手数は長いが詰み。
それにしても、6九飛と単に打てるところを、わざわざ△6八銀と捨てて同金に5九飛で詰みなどは、Z難度ともいうべき難しさである。
△6八銀には当時テレビ解説をしていた田中寅彦、島朗、林葉直子らは驚愕した。島さんは間違いかと思いモニターの盤面をまじまじと見直したほどだった。
1図からさかのぼっての△5七桂が寄せの序章で、△6八銀からの詰みを読んでの絶妙手だった。本局は、詰将棋作家でもあり詰めの名人である”高速の寄せ”谷川さんの名局だった。