将棋局面|渡辺明vs森内俊之2013-11-28竜王戦5局|森内が竜王位返り咲き!渡辺ついに9連覇でストップ
2013年11月28日~29日第26期竜王戦七番勝負第5局
森内俊之名人、竜王位返り咲きの一局より。 矢倉▲4六銀戦法で、前局に続き角を成らせる将棋になって驚かされた。 1図は▲7一角と打ち4四の金を△4三金引と引いた局面だが、意表の次の一手が出た。
▲5七金
森内が竜王位返り咲き! 十年前のリベンジを果たし、再び竜王名人となる 渡辺ついに9連覇でストップ
▲5七金がものすごい強手だった。 2図以下△同馬▲8二角成と進む。先手は飛車を取れるとはいえ、後手の馬が好位置に来るので怖い。 攻められるのが嫌いな人にはとても指せない手順だ。森内名人は敵を引っ張り込んで戦おうという意図だった。
その後は△4四歩で銀を取られて△6九銀と打たれる展開になったが、森内名人が攻めをうまくいなして勝ち。 スコア4-1で、10年ぶりに竜王位に返り咲いた。
将棋界の二大ビックタイトルを合わせ持つ「竜王名人」は実に久しぶりで、同じく10年前の森内さん以来だった。 思えば10年前に森内さんが竜王・名人・王将の三冠王で、「森内時代」と思っていた頃だった。 そこに20歳の渡辺明六段(実質は五段! 挑戦者になって規定で昇段した)が竜王に挑戦したのだった。 結果は4-3で渡辺新竜王が誕生し、竜王戦における長い長い「渡辺時代」がはじまった。 逆に森内さんはショックが大きかったのか、直後の王将戦は羽生さんに獲られて名人だけになってしまった。
いわば森内さんにとって渡辺さんは「憎き相手」であった。 その後挑戦して0-4で負けているので、「積年の恨み」のような感情もあったかもしれない。 今期の森内さんの戦い方は実に巧妙だった。渡辺さんに攻めさせてかわすという、得意の展開に持ち込んだ。 自分の土俵にうまく引っ張り込んだ。 それにしても、攻めの強い渡辺さん相手にこんな戦いができるのは森内さんしかいない。 全局とも内容良く、見事にリベンジを果たした。 森内さんは間違いなく「パワーアップ」して登場してきた印象だった。40代でなお強くなっているのはすごいことだ。 それと、森内さんは第2局と第5局は、前局で渡辺竜王がやってきた戦法を逆を持ってやりかえすという、まさかの選択だった。 森内さんは先後どちらを持っても勝って「往復ピンタ」を食らわした恰好になった。渡辺さんはダ精神的メージが大きいだろう。
渡辺明さんは9連覇していた竜王をついに明け渡し、王将棋王の二冠に後退した。 いつしか「竜王は渡辺」が当たり前のようになっていただけに、これは近年の将棋界でいちばんの「大事件」であった。 渡辺さんは失冠したとはいえ、精彩が無かったというような内容では決してなかった。 目立ったひどいミスのようなものはなかった。スコアに差が開いたのが不思議なような大熱戦の連続だった。 竜王を失った渡辺さんがこれからどう暴れるのか。再び竜王に返り咲くまでの今後の活躍が楽しみである。