将棋局面|中原誠ー桐山清澄1981/04/09名人戦第1局|中原、持ち駒を生かした光る寄せ
1981/04/09第39期名人戦第1局
先手:中原 誠名人 後手:桐山清澄八段
先手の持ち駒を生かした寄せが見もの。
▲4三と△同金▲6六桂△9二玉▲7四桂△5一歩▲1六角
中原、持ち駒を生かした光る寄せ
▲4三とと捨てたのが面白かった。それで▲6六桂と手筋の桂馬。
△9二玉から△5一歩は術を尽くした頑張りだが、▲1六角の両取りで最初のと金捨ての意味が分かった。
2図以下、6八馬、 同金、9九飛成、4三角成、7九銀、8二金まで先手勝ち。
持ち駒を生かし、うまく盤上に打ってゆく中原名人の寄せが光った。
将棋局面|村山慈明-千田翔太2016年03月20日NHK杯決勝|村山慈明がNHK杯優勝
2016年03月20日第65回NHK杯決勝
村山慈明七段 千田翔太五段
先手番だが手が広くどうしていいかわからない局面。
「勝負の呼吸」を感じる進行だった。
▲4五歩△3八角成▲同飛△同と▲4四歩△同歩▲8八玉
▲4五歩とじっと歩を伸ばしたのが気づかない手。玉頭は後手の弱点とはいえ見えずらい。次にすぐどうという手が見えないし・・・。
この「無言の圧力」のような手に千田(ちだ)五段は困ったようで考え込んだ。
飛車角交換になったが、先手▲4四歩の突き捨てからじっと▲8八玉と上がる。
プロ同士だと単純な攻めでは不備を突くきつい反撃がくる。じっと力をためる勝負の呼吸が大事で、われらアマチュアには見えずらい手がよく見られる。
▲4五歩から▲8八玉は地味な進行ではあるが、村山七段の指し手にはほとほと感心させられた。
このあとも終始村山ペースのように見えた。先手村山快勝、NHK杯優勝となった。
千田五段の初出場で準優勝というのも驚異であった。
村山慈明(やすあき)七段の表彰式を見ていて「おめでとう」という気持ちがこみあげてきた。気の強そうなわんぱく坊主のような表情だが30歳を過ぎていて、もはや若手とは言えない。2014年に棋聖戦挑戦者決定戦に進出したが森内九段に敗れてしまった。今回の優勝を機にタイトル戦登場にチャレンジしてほしい。
将棋局面|羽生善治-郷田真隆2016/03/18王将戦第6局|郷田が45歳にして人生初の「防衛」
2016/03/18第65期王将戦七番勝負 第6局
8一の飛車がじっと△6一飛(好手)とまわって▲2四歩と突いた局面。後手にとって悩ましい局面だった。
△2四同歩▲2三歩△同玉▲3五歩△6五歩
郷田が45歳にして人生初の「防衛」
2四同銀と取りそうな局面だが△同歩と取った。▲2三歩のたたきから▲3五歩と突くのが嫌な攻め。後手も△6五歩と急所攻撃。
角が3一まで利いて1五桂が残るから後手玉は危なっかしい。なんとも大胆で力強い指しまわしに見えた。先手に攻めさせてうまく反撃し、後手郷田勝ちとなった。
郷田さんは4-2で王将初防衛を果たした。また、人生初の「防衛」でもあった。これまで棋聖、棋王など獲得しても翌年防衛はできなかった。45歳初防衛は将棋界で最年長記録かな?
今回、”羽生奪取、五冠復帰”かと予想していたが・・・
思い返せば1992年に21歳四段で谷川さんを破り王位獲得という衝撃的な郷田さんだった。しかし翌年羽生さんに獲られ、翌年、翌々年と連続挑戦した。3年連続の大勝負だったが郷田さんは防衛も奪還も成らず敗れた。
あのとき郷田さんが勝てば棋士人生を快走したと思うが、羽生さんに完全に勢いを止められてしまった。それ以来羽生さんから一度棋聖を奪ったことはあったが、対戦成績はほぼダブルスコアという大きな負け越しであり、天敵であった。
あの日苦杯を喫した天敵羽生さんを下し、45歳にして初めて防衛を果たした。四段でタイトルを獲り、スピード出世の郷田さんだったが、むしろ今棋士人生の全盛期真っ只中である。
将棋|佐藤康光 vs 森内俊之 2007-03-18 NHK杯決勝|佐藤がNHK杯初優勝
放映日:2007/03/18第56回NHK杯戦決勝
「佐藤康光棋聖」vs「森内俊之名人」
佐藤の▲ダイレクト向飛車で力戦だった。
1図「端玉に端歩を突け」の△1四歩がきびしそうに見えた。
後手良しに見えたが・・・。
▲5九飛△1五歩▲5五飛△ 同金▲2五桂
佐藤がNHK杯初優勝
▲5九飛まわりが好手だった。飛車斬りから▲2五桂。
2図になると急に攻守入れ替わって先手が良く見える。1図では後手良しに見えたので「あれれ?」である。キツネにつままれた感じ。
もともと先手良しだったのかなあ? 詳しい方は教えてください。このブログのほとんどの記事は、解説書を見ずに書いているもんで・・・。
ともあれこの後、駒をはがす寄せで先手佐藤勝ち。NHK杯初優勝となった。
ちなみに佐藤さんは次の年も優勝して連続優勝を遂げた。
将棋局面|田中寅彦 vs 高田丈資 1977-03-11 十段戦|若き日の田中寅彦、居飛車穴熊で妙手から快勝
1977-03-11 第16期十段戦予選
*「田中寅彦四段」vs「高田丈資六段」
居飛車穴熊vs石田流で後手が銀バサミをねらった。
先手ここでどう攻めるかと思ったら・・・
▲7三銀成△同銀▲4二角成 △同金 ▲6二飛成 △同銀 ▲6一角
▲7三銀成と焦点に成り捨てたのが妙手。
同桂は4二角成、同金、6二飛成。同玉は4二角成、同金、6四角でダメ。
同金が難しいが4二角成、同金、6二飛成で、後手が金取りを受ければ7一角と打つのだろう。先手銀損で簡単でなさそうだが後手はこれを嫌ったようだ。
実戦は△同銀と指したが飛車斬りから ▲6一角で”詰めろ飛車取り”が決まった。銀捨のときは「何があるの?」と思ったがこれでやっとわかった。素晴らしい攻めがあったもので、”ウル寅流”のスペシウム光線であった。
2図で3三飛は7二金でダメだ。2図以下△7二銀▲3四角成 △6一歩 ▲2二飛と進行。駒損を回復して馬ができてはイビ穴大優勢。このあと穴熊らしく大駒二枚捨てて、金銀だけで後手玉を寄せて先手田中快勝。田中寅彦九段の四段時代の会心譜からでした。
田中寅彦九段は低段時代から”振飛車には居飛車穴熊”で勝ちまくった。これをまねて多くの棋士が指すようになり、その後振飛車対策として居飛車穴熊が猛威をふるうことになった。
将棋局面|佐藤天彦-渡辺明2016年3月6日棋王戦第3局|渡辺の素晴らしい大局観
2016年3月6日 第41期棋王戦五番勝負 第3局
佐藤天彦八段 対 渡辺明棋王
▲2一飛成と桂馬を取ったところ。
後手は飛車が取れるが・・・。
△8三銀打
渡辺の素晴らしい大局観 飛車損でも後手良し
2図から数手後、田中寅彦九段が「△8三銀打で(先手が)悪いってことがあるんですかね。あるわけないですよね、絶対何か寄せがあったはずなんですよ」とぼやいていたという。
そのぼやきはよくわかる。後手は桂馬を取られて飛車損のうえに戦力ダウンの銀打ちである。
しかしよく見ると、後手はと金が2枚で飛車取りが残る。穴熊同士でも後手の穴熊の方が全然厚い。渡辺さんのことだから、8四桂の防ぎで(2八とは8四桂で先手勝ち筋)仕方なく銀を打ったというより、「飛車損でも後手良し」と自信を持って銀を打ったのではないか。渡辺さんの大局観は素晴らしかった。
2図から▲2九飛△5六角▲6三歩△6七と・・・大激戦が続き、170手で後手渡辺勝ち。
将棋局面|久保利明ー佐藤康光2010-03-07棋王戦第3局|佐藤の強い受けの好手
2010-03-07第35期棋王戦五番勝負第3局
久保利明棋王 対 佐藤康光九段
▲4一飛と打ち込んで後手玉が寄るか寄らぬかのきわどい終盤。
後手に受けの好手が出た。
△5一銀
佐藤の強い受けの好手
△5一銀が強い受けの好手。同銀成なら6三馬、5二銀、同馬、同成銀、同金、7一飛成、7三角。7二歩成なら5二銀。いずれも先手困る。
2図で同じようでも5一香だと先手の攻めは切れない。久保棋王「△5一銀以外の受けなら攻めが続くと思ったのですが…この銀打ちが決め手でしたね」
実戦は2図以下▲6一銀成△4一玉▲5一成銀△3二玉で飛車を取って安全になり後手優勢。
このあと先手陣をこじ開けて後手佐藤さんの勝ちとなった。
将棋局面|久保利明vs郷田真隆2012-02-25棋王戦2局|その2 郷田の好着想
2012年2月25日第37期棋王戦五番勝負第2局久保利明棋王 対 郷田真隆九段
早石田の大変化で、▲2二角と打ち込んだ局面。
ここから後手の対応が見事だった。
△8六歩▲同歩△1二飛▲4四角成△4六歩
郷田の好着想 飛車の大転換
3三角、同角成、同桂、2二角、4二金なら普通だった。これだと先手も香車を取って馬を作るのでやれるのだろう。
ところが△8六歩の突き捨てから△1二飛!が強防。そして2図の△4六歩が好手。
以下▲同歩△8六飛▲7七馬△4六飛▲4七歩△4二飛引(3図)と進行した。
王手馬取りを含みに、飛車を大転換したのが郷田さんの素晴らしい好着想だった。この進行は先手は馬を作ったものの、香車を取れず駒損で先手つらい。
後手はこのあと3五歩~3二飛左と二枚飛車を並べて玉頭から襲いかかり、郷田快勝となった。